ベイタウン中年バンドの秘密

ドラマーとしてもギタリストとしても超一級
バツグンのリズム感 Hinason(ヒナソン)
おじちゃんの「この人にスポット・第2回」



ヒナソンを語るときには、ドラマーの彼とギタリストの彼と、そしてコンポーザーとしての彼という3つの顔を同時に考えなくてはならないので、苦労する。そのどの顔も超一流なので、いったい何がメインなのか判断がつかない。そのくらい音楽的な才能に恵まれた人間であり、また彼のベイ中の参加は、単なるオヤジバンドの集団に芸術としての音楽の香りを運んでくれた。

ご承知の通り、彼はインディーズ業界に革命をもたらしているビーグル・ハットのメンバーである。70年代から80年代前半のビートルズやクィーン、そしてプログレロックのイエスなどのエッセンスと綿密な計算によって生み出されたビーグルハットの完璧なサウンドは、もはやインディーズの枠を越えている。

ビーグルハットの中でも彼の存在は大きい。単にリズムセクションを担当するのではなく、コンセプトの設定にも重要な役割を果たしている。それは彼が音楽を技術的なものだけでなく、イズムと背景までも含めたトータルな学び方をしているからそれが可能なだ。いや、学ぶというより彼の持つ非常にレベルの高いセンスで、音楽を理解しているからなのである。

彼のドラムは、正確なリズムを刻みつつも、整数で割り切れないような、微妙なところにアクセントを持ってくることがある。杓子定規ではない奔放なところがある。豊かな音楽表現力は、キャンバスに向かって自由に筆を走らせる画家のようでもあり、行間にこそ魂を込めている詩人のようでもある。テクニックを十分備えていながら、そのテクニックにおぼれることなく、きちんと情感を優先していることがヒナソンの凄いところだろうか。


ビーグルハットのセカンドアルバム
「カスガバール」

ビーグル・ハットの特徴は、ファーストをお聞きの方は、ご存じの通り、ビートルズ的なメロディアスな楽曲、YESやクイーンのようなコーラス・ワークと楽曲のユニークな展開。そしてバラエティに富んだ楽曲の数々。「アスガバール」は、1曲の長さを3〜5分以内とコンパクトにまとめつつも、1曲ごとにストーリーがあり、曲にも変化を持たせ飽きさせない。メイン・ヴォーカルは、ジョン・アンダーソンばりのハイトーン・ボイスであり、声質も似ている。購入して裏切られることはない!
 野田誠司


ギタリストのヒナソンは、もちろんテクの面では他の追随を許さないくらいの腕前を持っているので、私が語るのもおこがましい。しかし、テクの上下を語るつもりはない。速く弾けるから巧いのでもなく、楽譜どおりに弾けるのが良いのではない。ギタリストの本当の良さは、曲の持つマインドを大切にし、適切な箇所で、適切な音をきちんと出しているか、だと私は考えている。時には音を出さないことも重要である。

彼はきちんと曲のマインド、ストーリーを把握しているからこそ、あのような素晴らしいプレイが出来る。粘っこいチョーキングにしても、タイミングの取り方にしても、絶妙なビブラートにしても、一音一音を大切に、情感を込めて弾いている。どちらかと言うとウェットな音を出す。このシリーズで登場したホソカワ氏とはまた異なるタイプのギタリストである。


ヒナソンのロック
私が完全に把握しているわけではないので、本人から異議を唱えられるかもしれないが、彼の基本はビートルズである。ただ、ビートルズにめちゃくちゃ熱中しているかといえば、高校時代にはプログレ、そして、大学時代はクロスオーヴァーとターゲットが時代とともにシフトしている。しかし、単に次々に消費してゆくのではなく、それぞれをしっかりと咀嚼してゆくし、また時々後戻りもしている。彼曰く、ロックのおいしいフレーズやリフの資産は70年代、80年代の早い段階で考え尽くされてしまった。従って、それ以降はどうしても真似になってしまうのが辛い。だからまた昔のアーティストの音楽に回帰しているのである。


意外だが、彼はかつてブラスバンド部でトランペットを吹いていた。管楽器をやっていたなんて、イメージと異なるが、そのお陰で、音楽をきちんと学べたらしい。だから楽譜はあまり得意でないと謙遜しながらも自宅で山下達郎ばりの多重録音などをこなせるのだ。基礎が出来ているからだろう。

それと、もうひとつ、最後に言えることは、彼は猛烈に音楽が好きなのである。たぶん私が知る限りでは、一番音楽が好きな人間である。それは、楽器が好き、誰のどの曲が好き、などという表面上の次元を超えた、もっと計り知れない根源的なところで音楽を、いやロックを心から理解し、尊敬し、愛しているのである。

2005/3/3 おじちゃん



尚、毎度毎度言い訳ですが、誤字脱字等、語彙の少なさがゆえに表現力の欠乏、薄識がゆえの言い回しのマズさについては何卒ご容赦ください。それにしても、電車の中で書いていると乗り過ごすことも多々ある。(笑)


おじちゃんの「この人にスポット」シリーズ
Vol.1 ホソカワ氏   Vol.2 Hinason   Vol.3 じょん吉  Vol.4 TomTom


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